蒼城の小説連載ブログ@不定期

不定期でオリジナル小説の連載をしていきます。

琥珀色の壁 #4 ソーシャルワーカーの猫

 小説家になろうで前話掲載中→

The Wall ~ 琥珀色の壁 ~

aoshirosora.hatenadiary.com

 


 ジェシカと別れ、クヌギに連れられてアキラはカフェテリアに来た。
洗浄室からカフェテリアまではエレベーターで1つあがり、廊下を歩いてすぐ近くだった。それまでの移動の間、不思議と誰にも会うことはなかった。

 カフェテリアに入ると、まずは入って右側が壁の代わりにガラスあり、外から燦々と太陽の光が入ってきていた。カフェテリアの広さは200人程が同時に食事を取れるくらいの広さだった。

 アキラがテーブルや椅子の先にある窓の外の風景に、目をこらそうとしたが、クヌギに名前を呼ばれて反対を見る。

「日本語表示にしたから、自分で好きなのを選びなさい」

「はい。なんか食券販売って学食みたですね」

 無難にカレーライスを選んで、リゾットセットを頼んだクヌギに連れられて窓際の4人テーブルに着いた。

 窓の外の印象は広大な森林を必要に応じて伐採し、建物を建てたようだった。よく見れば木々の間を道が走っている。

「あの高いビルは?」

 円形に広がる街の中心に東京タワーよりも遥かに高いビルがあった。一番に目につく、そのビルを指差して問う。問われたクヌギは、スプーンで掬ったリゾットに息を吹きかけて冷ましていた。

「あれはセントラルタワー。この世界の中枢があのビルに集積されている。大統領の1次サーバ郡もあそこにある」

「サーバ?ある?」

「ああ、大統領のメインサーバは何処にあるかは秘匿事項だが、1次サーバはあそこにある」

 あちち、と言いながらもリゾットを食べる。

「……そうか、アキラの年代には人工知能の黎明期前だったな」

 クヌギは自分が食べるのを手に止めて、逆にアキラに食べながら聞くように促しながら、説明をした。

 現在、アキラがいる位置はメトロポリタン魔術科学学院、通称カレッジの分棟の研究棟。ここからは見えないが、渡り廊下でカレッジの本棟と繋がっている。カレッジを含めて、メトロポリスの主要施設はセントラルタワーを中心に、建てられている。配置は緊急時対応マニュアルの準備項目で設定されたもの。そして、セントラルタワーの最上部分に位置し、マニュアルを設定したのは人工知能イデアイデアは世界初の人工知能の大統領であり、開発者から与えられた使命を全うすべく稼働をしている。

「失礼ですけど、人工知能に大統領って無茶なんじゃないんですか」

「そうか?開発者の入力に間違いがなければ、より合理的で理性的な大統領だ。膨大な変数の演算を行い、予想をシミュレートし、結果を反映させる。経年劣化も自分自身で考慮を行っており、セキュリティ対策も独自のものを開発し実行している。……イデア本人も使命達成後は機能停止を望んでいるから、酷使は出来ないだろうな」

「……すみません、理解しようと思いますが、理解出来ないです」

「そうだろうな。ちなみに君をカレッジに引き渡してくれたのがイデアだ。いつか会うことがあると思うから、伝えとく」

「大統領に会うって考えても、現実感ないですね」

 アキラだけが食べ終わり、話も外にある他の建物や区域に変わるところで、割って入る猫が来た。

「はじめまして、アキラ=イチノセ。そして、Dr.クヌギ、こんにちは」

 唖然とした顔でアキラはテーブルの上の黒猫を見た。綺麗な琥珀色の目でアキラを見ており、クヌギにも顔見知りのように話している。

「ねねねねねねね、猫が喋ったあああ!?」

 予想していなかったアキラの声にクヌギも猫も目を丸くし、周りがアキラに注目する。

「喋れる猫もいるだろ。何言っているんだ?」

「でもカレッジではあんまり見ないでしょ」

「あれ?あの子って……どこで見たんだっけ?」

「先週の輸送で見たんだろ。博士といるところを見ると、無事に解凍出来たんだな」

カフェテリアがアキラに気づき、ざわつき始めたところでクヌギが手を数度叩いて、声を少し張り上げて言った。

「自由時間なところ申し訳ないが、彼女について無駄口はやめたまえ。あと、君ら、私は輸送時に戒厳令を敷いたはずだが?あとで、反省を込めてレポートを提出しろ」

「人の口に戸口は立てられないと言いますし、無理じゃないですか」

 アキラが顔を真赤にして、こじんまりと座り直したところでカフェテリアも通常のざわめきに変わった。クヌギに睨まれた一団はすごすごとカフェテリアを後にしていた。

「私の名前は、アミュレット。ソーシャルワーカーとしてシャルロットお嬢様から遣わされました。魔法はご存知と耳に入っていましたが、猫が喋るのはご存知でないとは驚きです。しかし、こちらの配慮不足でした」

「そもそも猫の声帯で人間の言葉を発言出来るのか?解剖学的に無理だろう」

「貴方の疑問は、七面倒臭いのでスルーしたいのですが。アキラがいることもありますし、説明しますと、猫は命を重ねるに連れて、魔力が高まり世界が広くなるんです。世界を理解するために、私達猫は人間の言葉も理解するようになるんです。また、実際に声帯を震わせて会話をしているのではなく、一種の念話です。低級魔法ですが、狭い範囲で言葉を言語の壁を越えて伝える事が可能です」

「なるほど、いやいや、疑問は投げかけるものだな」

「カレッジに猫は用事はないですからね。今では猫も寡黙ではなくなりましたから、Dr.クヌギが疑問に思わないのも不思議ではないでしょう」

「アキラ、こちらの猫は君のソーシャルワーカーだ。ジークフリード女史が手配したのだから、魔法側の人間が来ると思っていたが、まさか、猫が来るとは私も驚きだ」

 猫がソーシャルワーカーなの、とアキラが疑問に思ったが、今回は口に出さなかった。

「卵から孵ったばかりであり、大人の鳥でもあるこの子の面倒を見るには身軽なものが良いと判断されたようです。私も9つ目の命ですからそろそろ引退を、と考えていたものですので、最後の仕事として請負ました」

「そうか。引退最後の仕事、頼んだぞ」

「お任せを」

 アミュレットが頭を下げると、アキラに向き直った。

「アキラ、食事が済んだのなら行きましょう。そろそろ日の入りの時間なので、夜までにやることが沢山ありますから」

「もう行くのか」

「ええ」

「えっと、クヌギ博士とはお別れですかね。まだ頭が混乱しているんですが、お世話になりました?」

 立ち上がり、首をかしげながらもアキラは頭を下げた。

「なんだね、その疑問符がついたような言葉は」

 くふふ、と子供のように笑ってリゾットを食べ始める。

 アキラはこれまでのことを、目覚めてからほんの数時間のことを思った。例えば医療処置をした医者が患者の面倒をここまで見るだろうか。メンタルケアが必要な子供でもないのだアキラは。

 このクヌギという人物はとても面倒みが良いのだろうか。それで片付けてもいいのだろうか。眠って、目覚めて、ここに来たアキラはどこまで彼のお世話になっていたのかは知りよしもない。

「どこまでを感謝したら良いのかわからなくて」

と、ありのままの言葉を述べると、クヌギはキョトンとした顔をして、更に顔を緩ませて笑った。

「今は食事を奢っただけだ。ここの味はいけるだろう?住まいのことが落ち着けば、外で美味しいものをご馳走しよう」

「楽しみしていますね、ありがとうございます。お別れの言葉は、さようなら、でいいんでしょうか?えっと、ジーク、フリードさんは変わった別れ方を言っていたので」

言葉を記憶の中の単語を選びながら、アキラは言った。

「それは祝別ですわね。主に魔法族が用いいるものですので、学者に対しては特にいらないでしょう」

「いらないとはなんだ、いらないとは」

「シャルロットお嬢様は変わっていらっしゃるお方ですから、科学者風情にも祝別をしますわ。祝別の効果が殆どないと分かっているのに……。
アキラ、祝別とは魔力を用いて”幸運を”と相手に送るものです。多くは幸運を祈るものでありますが、呪いを手向ける場合もあります」

「なるほど。……私に魔法は使えないけど、次までお元気でいてください、クヌギ博士」

刺々しい言葉をクヌギに向けてアミュレットは、簡単に祝別について説明をした。一方、アキラはクヌギぬ再び頭を軽く下げてさようならと言った。

クヌギはリゾットを食べ、アキラはアミュレットに連れられて自分自身は知らない目的地に向かうはずだった。が、短い先の予測は今の現実に覆される。

カフェテリアを轟音と共に爆発が襲った。

 

 

琥珀色の壁 #3 科学と魔法と奇跡の存在

 前話

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「薄いピンクのシフォンワンピースに、濃いピンクの刺繍を施して、ひらひらと舞うようなスカートにしてくれ。あと、上着は」

「はいはいはいはい」

自動開閉の白い引きドアが閉まる直前まで、アオバはアキラが着る服に関して注文を施していた。直前はワンピースだったが、下着や靴などについても注文をつけている。

クヌギ博士にデリカシーを投与してあげたいわ、まったく」

ドアに鍵を施した女性は、ジェシカと名乗った。白衣を着ていて、アキラから見て自分の姉と同じぐらいかと思った。

アキラとジェシカが入った個室は、洗浄室と呼ばれるもので入った部屋の置くには大きなガラス容器の機械があり、天井には汚染除去シャワーかかれた札と共にシャワーがむき出しになっていた。札は日本語の他に中国語や英語などの言語が書かれているが、明らかに意味不明な記号の文もあった。

入って右手にはガラス張りのドアがあり、普通のバスタブが見えた。

「研究施設だから、こんなバスルームだけど我慢してね。あ、でも、アキラちゃんが入っている間は部屋で待っているけど、見ないから」

そういって、ガラス張りのドアの方を指す。

「博士は目を離すなって言っていたけど、プライバシーは尊重でしょ」

「ありがとうございます」

ドアの取手付近にジェシカが手をかざすと、先程のドアと同様に自動で開いた。促されて中を見ると、アキラの知っているバスタブとシャワーがあったが、知らないボタンや、ダストボックスと書かれた壁の取っ手などがあった。

「使い方わかる?」

「シャワーはひねればいいですか?あとバスタブの蛇口も」

「そうそう、ひねればいいわ。シャワーの近くのボタンを押すとoutで書かれた部分からボタンに書かれたものが出てくるから。……くれぐれも読めないボタンやお風呂で使いたくないボタンは押さないようにね」

例えば、弱酸とかね、と念を押されてアキラは勢いよく頷いた。

「何色が好き?または、何色の気分?」

「え?」

「服のオーダーをするから、好きな色だけでも聞いておこうと思ってね。今日だけの服だからデザインとか機能性が合ってなかったらごめん。

……博士の趣味は無視したものにするから」

服の話でにこにこしたり、申し訳無さそうな顔をしたり、博士の話でにやっと笑ったりと、ジェシカは表情がころころ変わる女性だった。

アキラは「今日の気分」と、思い浮かべて、ふと、姉のことを思い出した。
趣味の域であったが、養蜂家だった姉を思い出した。蜂蜜が大好きな人だった。そして、シャルロットが琥珀や蜂蜜といった言葉をアキラに残して行ったので、なんとなくであったが。

「黄色、かな。やわから目の黄色」

「黄色ね」

 

 

体を急いで洗って、お湯を張ったバスタブ入った。
念入りに体を洗うほど汚れていると思えなかったし、アキラは何より先にお風呂の温かみを得たかった。

一息つけたアキラは、真っ白な天井を見る。

洗浄室にしては、快適なバスタブであった。テレビでみたことのある汚染除去のための洗浄室はホースだったらしい、天井のシャワーだったのに、だ。

「100年ぶりのお風呂……ふふ」

冗談は笑えるようで笑えなかった。泣かないのは、きっと、実感がまだわかないからだ。

 

姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに会いたい、姉さんに、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、姉、

 

バスタブが泡立つ。底から泡が立つ。泡が立つお湯。泡が立ってとろみが立つ。何かを思い出しそうになる。外と自分ではなく、自分の中に生まれる違和感。姉の声を聞きたい。姉の声を聞いたい。アキラはそう願った。あの声を聞けば、自分は自分でいられ。――――。

「アキラちゃん、起きてる?寝ちゃった?」

はっ、として抱えていた膝から顔をあげた。気がつけばバスタブのお湯は流れていた。何故かアキラはわからない。100年後の技術かもしれないが、違う気がした。……いや、そうかもしれない。

「起きてます。今、出ます!」

「はいはい、タオル」

慌てたアキラの声に、ジェシカが笑った声が聞こえた。アキラが焦った原因が可愛いものだと思っているのだろう。

自動なのにどうやったかアキラはわからないが、腕一本分の隙間を開けてバスタオルを差し出していた。

タオルは新品のようにふわふわだった。贅沢だ、とアキラは思った。

「下着とワンピースは出来たわ」

「出来た?」

バスタオルを体に巻いて、ジェシカがいる部屋に戻ると彼女は服が入った籠をアキラに渡してきた。手が空くと、もう一枚バスタオルを壁の収納ボックスから出して、アキラの頭に被せる。ジェシカの用事が済むと、収納ボックスは壁と同化した。壁=収納がメインの技術なんだろうか、とアキラは思った。

3Dプリンターは知っている?あれで服を作るのよ」

部屋の奥にあた水槽のようなものは、3Dプリンターだった。今も頭部のないマネキンに対して上着の部分を制作している。

「3Dペンみたいなものは、お店で見たことありますが、プリンターは初めて見ます」

「22世紀になってから、服を作れるようになったから、アキラちゃんの時代ではないかもね」

3Dプリンターはアキラの時代では、細い熱されたプラスチックのようなものを糸にしてものを作っていた。ニュースでちらっと聞いたことのある3Dプリンターは、継ぎ目が荒かった気がする。

けれど、渡されたワンピースは柔らかく、アキラが着ていたブラウスと同じような出来栄えだ。技術が進んだことをアキラは知る。

「白いワンピースに、このあたりの地図を白で刺繍してみました。外に出て迷ったら見てみてね」

「……見ないと思います」

服に地図を刺繍する発想に、アキラは苦笑いした。刺繍を見てもアキラはちっとも、場所を読み取れなかった。そして、自分が外でスカートの裾を捲って、地図を見て唸っている姿を想像したが、あまり良いものではないかもしれない。裾にまで広がっている地図なので、見るのも難しいし、下着が見られないようにするにはしゃがむしかない。

地図の絵を見る限り、円状の町のようだった。円の、スカートで見ると、左下の円が線で区切られている。真円ではなく、欠けた円だった。

「はい、カーディガン。サイズはぴったりだと思うわ」

明るいが柔らかい黄色いカーディガンを、ジェシカが着せてくる。

「ありがとうございます。……正直、まだ未来だって信じられないですね。技術も少し私の知っているものと進んでいるくらいですから」

「そうね。100年くらいで日常生活の技術は変わらないわね。
100年の冷凍封印から貴方が目覚めたという話も、麻酔から目覚めた体に水をかけられたかもしれない。
お風呂も100年前の技術、21世紀で未来っぽく出来るわ。
3Dプリンターも、実は開発出来てましたって情報があるかもしれない」

夢見心地のようなアキラの疑心からの言葉にジェシカは、労るような声色で応えた。

「でも、目覚めたばかりだから敢えてこうやって少しずつ見せてるよ、クヌギ博士は」

会話を続けながら、洗浄室を出るように促してくる。

「100年。大きな節目を迎えながらも緩やかに成長してきた21世紀とは違い、この100年は急勾配な変化とその適応を繰り返してきた、猫とネズミの追いかけっこだ」

ドアをあけると左耳につけていたワイヤレスヘッドセットを外しながら、クヌギが部屋の前に設置されたソファーから立ち上がり、会話を続けた。

「盗聴ですかー?セクハラですし、犯罪ですよ」

「え、聞いていたんですか」

「準備室の中だけだ!全く、廊下でそういうこと言うんじゃない!
……アキラ、君はこちらからしたら立派な国宝級の生きた遺物なんだ。君の時代もモナ・リザや独立宣言書をセキュリティクリアランスが低い職員だけに任せるような研究機関もないだろう?
私だって好きで聞いていた訳ではないが、……聞いた成果はあったな」

慌てたように早口でまくし立て話し始めたが、最後は咎める視線をジェシカに向ける。

「クロノイド職員・ジェシカ。私は目を離すなとオーダーしたはずだが?わざわざ女性職員を要請したのは、入浴中も目を離すなということだったんだが?」

「初対面で間髪入れずにお風呂を一緒にするとか、配慮に欠けますーってマザーシステムから助言頂いてます。

そんなデリカシーがゼロだから、娘さんから名前で呼ばれてるんですよ」

「……」

ひくり、と苦い顔をして、口をつぐんだクヌギ

「娘さんいるんですか」

クヌギといて2回出てきた娘の話を、アキラは会話を変えようと尋ねる。
元々気になっていたのだ。見た目は自分よりも年下の少年であるのに、言葉の端々で年上のような内容が出てきて、物腰も大人のそれである。

「娘が1人な。孫もいる。孫は君くらいの年齢だな」

「ということは、博士はおじいちゃん位の年齢ですね」

「見た目は歳は取らないからな」

「不老不死の技術もあるんですね」

アキラはまだここが100年後と信じていないが、信じないと言い続けているよりも合わせた方が得策だと、経験上思った。

「正確には不老の技術だな。科学で不死の技術は夢のまた夢だな」

「100年後でも不死の技術は魔法・奇跡だけなんですか」

「そうだな。科学でも不死に近似した技術はあるが、不死の証明が出来ていないからまた、不死を与える技術を開発したと言えない。技術開発もIO倫理院が許さないだろう。
不死になった者に会ったことはあるが、どれも人智を超越してしまったのか、振り切れない執着心や諦めきった末の堕落や無関心の塊になってしまっていたな。
……ん?君は魔法または奇跡を信じていたのか?」

質問に対して、博士の肩書のように不死についてアキラに教授していたが、途中でアキラの発言に気づき疑問を投げかける。ジェシカはクヌギの長い言葉が始まると、近くの掲示板を無意味に見始めていた。が、アキラへの質問が始まると知ると、手に持っていたバインダーの中身を真面目に目を通し始めた。そして、アキラが返答する前に質問に答える。

「プロフィールには彼女自身”不死に遭遇”した経歴はありませんね」

「確かに遭ったことはないです。私の両親が魔法や奇跡といった知識の専門家でした。
両親の仕事は"魔法の淘汰"で、よく"不死に死を与える方法"がわからないと電話口で聞いていました」

アキラの両親は文字通り”魔法をこの世から消す"仕事をしていた。アキラ自身は魔法や奇跡に遭遇したことはない。

「魔法がまだこの世に生きているってことは、両親の仕事は達成出来なかったということ、ですよね。ちなみに私は魔法とか奇跡といったものには遭遇したことはないですが、存在はあると知っています」

「興味深い。信じている、よりも知っている、と確証しているとはとても興味深い。アキラ、君の経歴、文字や映像に起こせる資料は目を通したが、君自身の言葉が一番が一番、好奇心の擽られる!」

「落ち着いてください、クヌギ博士。実験体は豊富にあるでしょう。保護対象をモルモットを見るような目で見るのは止めてあげてください。所長に言いますよ」

「わ、わかっている。……どうするにしても、この会話はマザーシステムに届いていることだろう。
アキラ、君自身が魔法や奇跡を知っていると、この先の説明をするには楽だ。
君にはこの100年で起きた人類の重大な転機と、メトロポリスを担う3つの力について知ってもらわなくてはならない。100年の知識の差で精神を病むことを懸念に思ったが、少しは軽減できそうだ」

咳払いを挟むと、クヌギ博士はアキラを、まるで自分の娘を見るような、優しい目で見て、

「その服はとても似合っている。
靴は暫くはスリッパで我慢してくれ。靴に関しては、ジークフリード女史の紹介で良き靴職人を紹介してくれるそうだ」

 

琥珀色の壁 #2 冷凍されていた過去

The Wall ~ 琥珀色の壁 ~ - 目覚めた少女 

タイトルを変更して、The Wall ~琥珀色の壁~として、連載&掲載しています。

前話 

 

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渡されたレモン味の飴を舐め始めたところで、アキラは思わず飴を噛み砕きたくなる光景を見た。目の前の大きな鏡が貼ってある壁が、鏡と白い壁のパーツの組み合わせにようにバラバラになって、左右の壁に収納されたのだ。
継ぎ目どころか、パーツが宙を飛んでいたのだ。

「マジックミラーだったんだ。驚かせてすまないな」

白衣を着た子供が手元のタブレットの画面を見ながら、アキラに謝ったのだが、アキラにとっては見当ハズレな謝罪だった。マジックミラーよりも鏡や壁が宙を舞って収納された方が驚きである。

一緒にいた女性は白衣よりも対象的な、真っ黒な軍服のような制服を聞いていた。腰には辞書のような厚さの目を引くアンティークな本が提げられていた。

彼女たちの後ろでは、3人の白衣を着ている人間がアキラに目もくれずに、画面や空中投影されるホログラム、珈琲のサイフォンのような器具に集中している。

「はじめまして、シャルロット=ジークフリード。古き血と不可侵の壁を守る一族の末娘」

前半はすっと頭に入ってくるが、後半が咀嚼理解するのに時間がかかってしまった。

「私はアオバ=クヌギ。こちらの女史のように名告りはない、ただのバイオ科学専門の博士だ」

博士の紹介のほうが理解は早かったが、見た目はアンバランスである。天才の子供はアキラ自身も会ったことはあるが、表情や動作が大人そのものである。違和感があると言えば、シャルロットの真っ赤な目もそうだった。

「君の理解力が凡人であることを願って、丁寧に説明する。馬鹿にしているわけではない。真面目に凡人であることを願っている」

水浸しのまま飴を口の中で舐めているアキラの表情を読み取って途中でフォローを入れてくるが、フォローになっているのかわからない。

「順序良く行こう。壁の番犬当主を何時間もここに置いておくことはできないしな。

私たちにも、君にも良い知らせだ。君の持っている常在菌を含め、この時代の生き物が適応出来ない菌はなかった。……君の名は?」

タブレットから顔を上げて、目をかなり細めて、アキラをみた。

「一ノ瀬アキラです」

名乗ってから気づいた。名前と苗字、どっちが先なのかわからなかった。

「イチノセ、アキラ……。日本人だから名字がイチノセで、アキラが名前だな。ここでは名前を聞かれたら、アキラ=イチノセと名乗る方がいい。その方が楽だ。

ではアキラ、逆に君がこの時代の環境に適応できるように勝手に医療的な措置を施させて貰った。ソーシャルワーカーが後で君につくと思うから、権利の侵害だと思うことはその人を質問攻めにしてくれ」

「科学者ってすぐ他人に説明を押し付ける……」

「魔女はすぐに煙に巻くだろう」

他の人間が作業している机からシャルロットが何かを持ってくると、彼に手渡す。眼鏡だった。道理で見にくい、と彼は眼鏡をかける。

「正確な年代測定はまだだが、100年前に君は冷凍封印されていた。科学的に冷凍され、その上から魔術で封印を施されていた」

アキラの追いつこうともがいていた思考が止まった。アオバが、それこそ少年らしくない親のような優しさで、同じことを話す。

「君は100年間、眠っていたんだ。理由はわからないが、今の時代なら解ける封印だった。

意味を言い換えれば、アキラが生きていた時代よりも100年の未来。残念なことに近くて遠い時間の差だから、君が何を理解して、何が理解できないのかわからない」

冷凍保存。そう言われて、自分の周りにあった水と結びついた。この水はたった今、解凍されたから出来た水であろう。100年前の水。

「今は、何年ですか」

飴を舐める気が無くして、手で持つ。

「2145年、8月。暦に関しては変わっていないはずだ」

最後の言葉が曖昧だった。

「私は2016年8月27日……確か、吹奏楽の練習をしていた。
でも、これ、制服が違う」

「違う?」

「中学の制服とは違う。中学はセーラー服。これはブレザーだし、冬の格好みたい」

アキラが来ているのはブレザーの制服。ブレザーの下にはベストまで着込んでいた。

シャルロットはアキラの言葉を聞いて、指で数え始めたが、何を数えたのかは口に出さなかった。

「長期冷凍保存された人間は数少ないからな、記憶の混乱もあるんだろう。ショックを受けるのはわかっているが、過去に戻ることが出来ないから、少しずつ理解をして欲しい」

優しく言われているが、アキラの頭のなかでは「夢なら早く覚めろ」と唱え続けている。年の離れた姉がいる家に帰りたいと願っている。

「検査結果が全部出た。ソーシャルワーカー付きで保護を申請しておく」

「私の方はまだね。クヌギ博士、ソーシャルワーカーは私から圧力かけて早くこさせるからここで少し保護しておいてくれる?」

「ああ、そのつもりだ。長くかかるようならクロノイド職員の誰かに見ていてもらう。

おい、ジークフリード女史。情報過多になるような退出方法は取るなよ」

眼鏡を外し、胸ポケットにしまった。

クヌギ博士の指摘に、彼女は合点がいき、直前で何かをしようとして上げていた手を下におろして、ドアの方へ向かった。

「心配しないでね、愛するべき過去。
君の人生が琥珀色の過去と蜂蜜色の未来であることを、私は祝福する」

また聞き覚えのない別れの挨拶の仕方をされてしまったので、アキラは半口を開けた状態で、シャルロットの退出を見送ってしまった。

「名告り、に祝別……説明はソーシャルワーカーに任せとくとするか」

「え」

「……」

アキラが濁音じみた音を出すと、困ったようにクヌギが頭の髪をかき混ぜて、ため息を付いた。

「確かに、愛するべき過去、であるから私も少しは愛する行動をするとしよう」

白衣とタブレットを後ろに投げて……投げたものは作業していた職員が慌てて受け取った……アキラに近づいて、手を差し出した。

「こう見えて私は60歳を越えているんだ。驚きだろう?
この研究所ではSクラス職員だから、何でも融通は効く。

では、服を着替えて、美味しいもの食べて、良い景色でも見よう」

見た目と同じ年齢のような、無邪気な笑顔出されたのでアキラは手に取って握手をした。

「さて、孫の如くかわいい服を着せるか」

 

琥珀色の部屋 #1 目覚めた少女

琥珀色の肌

第一章 冷凍された過去

 電流が走ったような痛みを感じて、飛び起きて、慌てて息を吸った。肺の中に酸素が無かったかのように一ノ瀬アキラは、何度も音を立てて呼吸を繰り返した。

 彼女の目に入ってきたのは、手術台にあるような9つの電球がついた位置が変えられる照明器具。呼吸が落ち着いてきたころに、自分自身が危険な状態かもしれないと脳が気づいた。手術台のような台に乗っている自分向かって、槍の形をした機械が向けられていて、今まさに電流がばちばちと音を立てて先端に溜まっている。ひっ、と体をビクつかせるとびちゃびちゃと水が落ちて跳ねる音がした。台の上と床の上は水たまりが出来ていた。

 感電してしまう。また、怯えた。しかし、感電死といったものは杞憂な考えだったようで、槍状のものは天井へ機械音と共に引っ込み、眩しいと感じていた照明器具も、明かりが消えて、天井の窪みへ収まった。部屋は手術室のように清潔感のある白基調であったが、彼女の目の前には腰の高さと天井の間にある大きな鏡があり、先程見たものと台以外何もない部屋だった。

『はじめまして、ジェーン・ドゥ。混乱しているのはわかるし、同情もしているが、もう暫く辛抱してくれ』

 鏡がある方から少年の声がする。声が高いとかではなく、本当に子供の声だ。大人の落ち着きが違和感をアキラに感じさせる。

『同じくはじめまして。私はシャルロットよ。今のはクヌギ博士って名前で立派な成人のおっさんだけど、貴女の混乱は分かるわ。痛みはないから、その台の上でじっとしててね』

 同じく方向から声がするが、今度は大人の女性の声だった。自然と身を出来るだけ守るように、胸の前に無意識に手を持っていたアキラは鏡に向かって頷く。

『今、生体スキャンをするから動かないでね』

 向こうからこちら側が見えているか、頷きを確認したところで、今度は天井からソフトボール程の大きさの浮遊する物体が6個出てきて、目のようなレンズから青白いライトを浴びせ、アキラの周りをくるくる回る。続いて赤いライトを出して、上から下にかけて上下に浮遊した。

『あと血液検査にも協力してくれ』

 少年の方、クヌギ博士が追加の要求をしてくる。言葉を発する直前と後で、カチとボタンのような切り替えの音がする。

『ごめんなさいね。クヌギ博士が念は念を入れてってことで』

 浮遊物体が天井に戻ると、それに合わせて床からアームが伸びてきた。アームの先にはアキラの太ももくらいの太さの装置が着いていて、アキラの目の前に来るとワニのように上下に開いた。

『チクッとするけど、利き手を前に出して』

アキラは全力で首を振った。得体の知れないものの前に右手を出す気にはなれなかった。足に何かされても敵わない、と伸ばされていた足を引っ込めて、台の上で身を縮こませる。

『ただの採血だ。ほら、上手く出来たら飴やるから利き手を出せ』

『飴だなんて子供じゃないんだから』

『注射が怖いだなんて、子供だ。私の娘なんて、母親になるまで飴と引き換えに注射を受けていたぞ』

注射?これが注射?アキラの知っている注射はこんなワニみたいな機械に入れるものじゃない。曲がり曲がっても、こんな機械は血圧を測る時だろう。

「ちゅ、あ、じゃ…あ」

文句を言おうとしたが、声を出しにくかった。まるで喉が錆びついてしまったかのよう。声を出そうとして、うまく声が出ず、咽て何度も咳をする。

『無理に声を出さない方がいいわ。長い間使っていなかったから』

「大丈、夫。……注射器はこんな形してない」

がらがらの声で文句を言うと、暫く考えるような沈黙があった。

機械が1度閉じて、また開くと奥から蛇腹になった管に繋がっているが、アキラが見知った注射器の先端とメモリの付いた容器が見えた。

『これなら近い?』

「は、はい」

『じゃあ、腕を捲くってね。これは指先じゃなくて腕から採血するものだから』

まだマシ、まだマシ。とアキラは必死で唱えながら、着ていた制服の袖を二の腕まで捲り上げる。肌を晒した瞬間、問答無用で刺さる注射器。脈を探したり、アルコールを含ませた脱脂綿で拭ったりするが、アキラの知っている過程を飛ばしてぶっ刺された。

『はい、終わり』

注射器が機械の中に収納されて、口が閉じ、また開いて今度は。

『ほら、飴だ』

レモン色の棒付きキャンディを持った小さなアームがアキラの目の前に差し出された。

「き、いろ……」

合成着色料の鮮やかな黄色だったが、アキラにとってやけに映えた色に見えたのはこの部屋が真っ白だったに違いない。

 

 

SF小説 デイウォーカー #1 不老なるもの

#1 不老なるもの

私が住む都市の西側には、ウォールと呼ばれる壁がある。呼ばれる、とは変化もしれないが、「あの壁」と言えば子供でも知っている、唯一の壁のことである。
高さ4メール程の壁で、警護隊が24時間体制で見守っている。

幼学校時代に習った世界史で、ドイツのベルリンにかつてあったベルリンの東西を分ける壁があったが、それは悪しき考えで立てられたのに対して、ウォールは"守るため”に存在する。あの老いて、右足を引きずりながら杖をついていた女の先生は、「壁よりこちら側の人間を守るために、建てられた」と言っていた。

そう言えば、あの歴史家の先生は義足をつけなかったのだろうか。少なくとも私が学校を卒業するまでの9年間は義足のままだった。科学否定派の人間ではなかったのに、先生は義足をつけはしなかった。

「ちょっと、君!」

突然、ガシッと斜め上の後ろから肩に手を置かれて、捕まえられた。意識が少し現実から逸れて、後ろから何度も呼ばれたのに私は気づかなかったようだ。

私を捕まえた相手は、新しく入ったのか、見覚えのない夜間警備員だった。

「なんの悪戯かわからないけど、子供がこんな夜中に出歩いちゃ駄目じゃないか」

「……あー、と」

どうしよう。

と、思案する。研究に熱中して椅子に釘付けになったあまり、体がばきばきになってしまい、その運動に、と研究棟内を歩き回ったのがいけなかったのだろうか。いや、悪くない。他の学生、研究生、教授ともに夜中に徘徊しても怒られていない。流石に奇声をあげていた書生は捕まったが。

「こちら、タカギ。子供が校内を歩いていたので保護しました」

ヘッドセッドでつけられた無線に、連絡を入れる。僥倖。相手が屈んでいることをいいことに、肩に飛びついて、ヘッドセッドの向こう側にいる相手に聞こえるように声を荒げていった。

「保護されてない!私は、バイオ科学のアオバ=クヌギだ。誰かこの若造に、私のことを説明してくれ!」

ノイズの入った笑い声が聞こえた。眼の前にいるタカギとかいう警備員は、私が怒鳴ったせいで耳を抑えている。

『その人は、お前の親父と同い年ぐらいの年齢だぞ。いいから、クヌギ教授のことは。残りの見回り頑張れ』

「え、は?」

「君が私の受け持つ学生なら、遺伝子矯正についてレポート30枚を課すところだが、勘弁してあげよう」

警備員の先輩の声と、教授と名乗る少年に困惑したままの警備員を残し、私はさっさと自分の研究室に戻った。

研究室のドアの前までくると、自動で私のバイオメカニクスデータを読み取り、自動でドアが開いた。ドア、ロックと声帯コントロールをし、ソファに寝転んだ。

研究室なので、来客は殆どないのでソファの必要性はないのだが、大学では理由があれば許される。日の当たらないソファと珈琲の混ざった匂いには慣れた。

幼学校の歴史の先生をまた、思い出す。やけに思い出すのは、彼女を思い出すきっかけがどこかにあったのだろうか。

ひと思考考えたが、思いつかない。

先程の警備員に呼び止められた原因は私の見た目だ。……私の見た目が8歳程度で止まっている。母が胎児の遺伝子矯正で、私を「不老」にデザインしたのだ。遺伝子矯正は不法ではないが、劣性遺伝子に矯正するのは禁止になっている。様々な組み合わせの優性で、この劣性とも言える「幼児のまま」を実現させたのは、ある天才エンジニアだったが、母の執着心のお陰でもある。

ああ、そうだ。理解した。

来週は娘の結婚式だ。その時にバージンロードを歩く時、花嫁に父親がつきそう。そういう習わしだ。だが、今のままではバージンロードを歩く娘に恥をかかせることになる。このことを考えたくなくて、私は机にかじりついて研究していたのだ。家で待っている妻の着信が携帯に入っているだろう。

妻はありのままの私を愛してくれた。娘も愛してくれてはいるが、それは父親だからだろう。こんな少年のままのジジイを見たとき、周囲の反応は初めて会った娘婿と同じ反動のはず。

嗚呼、憂鬱だ。結婚式が憂鬱だ。

大人になりたい。子供の私は願う。50年以上も願っている子供の願いだ。
ある朝起きて、背が伸びてないかと、顔のまるみが減ってこないかと、何度も確認した。

移植用の体を作って、遺伝子矯正で大人にし、私の脳を移すこと。ホログラムで合成した老いた私をバージンロードを歩かせること。代理を立ていること。バージンロードを歩かないこと。……色々考えたが、どれも却下を下した。

生まれたまま、ありのまま、……遺伝子矯正の時点でありのままはおかしいが、あの先生のように、ありのままで生きることを許されたい。

(不老なるもの……あるいは、教授の憂鬱)

ナイトウォーカー #1 不死なるもの

不死なるもの

常世のここは、とても生きにくくなった。
ほんの100年くらい前ならば、身分が不確かな人間でも居場所を得ることは簡単だった。

夜を歩けるナイトウォーカーなら1つくらい日常生活で使える特技がないと、本当にこの世の中、生き辛い!そう、私は心の中で文句をたれた。

でも、そんな文句も直ぐに胸の内から湧き上がる悲しみで消えてしまう。

「狩屋君、もう逝くの?」

私の若い手で握って「君付け」で呼びかけるには、老いてかさかさになってしまった手。最後まで顔を見たいと、畳の上に敷かれた布団の傍らに座って顔を見つめる。

狩屋君が何を言っているのかもうわからないが、何度も、何度も、口の端を震わせて、断続的な笑みを浮かべているのはわかった。

「もう、いいのよ、狩屋君。もういいの。
おやすみ。狩屋君」

手を握っていない方の手で、髪が殆どなくなった頭を撫でて、顔を寄せる。

年の差なんて関係ない、ましてや、肉体の年の差なんて。

「また大人になったら、探してね」

待っているから、と唇を合わせると、狩屋君がほっとした息を最後にして、
息を引き取った。

「まるで、人間ね」

ここにもう狩屋君がいないことを知っている私は、気持ちを切り替えようとしたが、
立ち上がることが出来なかった。

嗚呼、今だけは……嗚呼、今だけは

そう、感情に免罪符をつけて、彼のいなくなった体に縋り付いて目を閉じた。

まだ、暖かった。それが悲しかった。

彼の前では、別れている間は自分なりに楽しんでいるから平気なふりしていたけれど、
本当は寂しい。何度も、出会いと別れを繰り返しているが、一人ぼっちになるこの時間が寂しい。

不老不死である私は、常世で転生を繰り返す彼を待ち続ける日々。

この世はなんて生きにくくなった。

本当は、今、生まれた彼を探し出して、一緒に住みたい。

でも、そんなことをすれば、デイウォーカーの追ってが来る。

だから、合法的に彼と出会わなければならない。

 (永遠に一緒にいてね、永遠がないのは知っているけれど)

はじまりの挨拶

はじめまして、もしくはこんにちは、蒼城です。

別のHatena Blogにてエンジニアの豆珈琲と同一人物です。

mamecafe.hatenablog.com

 ブログで連載をするに至った経緯

小学校、中学校、高校、大学と……小説を書くことがとても好きで、執筆活動を精力的に行っていたのですが、学生時代のテスト期間と借りていた無料サーバーが停止したことにより、7年間書き溜めていた小説がぶっ飛んだことが原因でスランプになってしまいました。連載も最終局面を迎えていたので、ショックが多くテストでSをとっても嬉しくも何ともありませんでした。

今回、女流エンジニアブログで文章を書き続けていたところ、もう一度小説を書きたい!という思いが強くなりました。

しかし、また1本一気に書き上げる力は出ていないため、ブログで投稿をし、ある程度まとまってからどこか更に読みやすいサイトに投稿したいと思います。

最後に

これから、どのぐらいの付き合いになるかわかりませんが、よろしくお願いします。

目指すはベストセラー作家!二次創作物を作って貰える作家!

頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و✑